信託の登記とプライバシー保護

〇自宅や収益用アパートなどの不動産を、信頼する家族に

信託を活用して管理・処分などを任せる場合には、

信託した不動産を登記簿で公示する必要があります。

 

 

1.契約書を作成・締結後には、信託契約書に基づいた

不動産の名義変更を行います。

 

不動産を所有している親が、今後の財産管理に不安を感じて子どもに

信託を行ったケースを考えてみると、登記簿の所有権を表す部分は、

「所有者である委託者(親)」から、「今後管理を行う受託者(子)」

へ名義が変更されます。

 

名義は形式上「受託者である子ども」に移ってしまうので、

あたかも「子どもへ生前贈与」したかのように見えます。

 

そこで「信託」によって管理者(受託者)が分かるように

「信託目録」が登記簿に記載されます。

 

信託の登記は所有権移転の登記と同時に行うことになりますが、

登記をすることで、子どもの債権者が差押えを行うことが防止

できます。

 

 

2.「信託目録」には、委託者(親)と受託者(子)で締結した

信託契約の内容が記載されますが、信託目録に記載される内容は

当事者又は代理人の司法書士が法務局に登記申請した内容に

基づきます。

 

信託目録には以下の項目が記載されます。

①委託者・受託者及び受益者の氏名・名称及び住所

②受益者の指定に関する条件または受益者を定める方法の定め

③受益者代理人(いる場合のみ)

④信託の目的

⑤信託財産の管理方法

⑥信託の終了事由

⑦その他の信託の条項

 

例えば⑤の管理方法について「不動産を売却するには、

受益者代理人の同意が必要」と契約で定めたとします。

 

この事項を信託目録に記載することで、受託者が勝手に不動産を

売却しようとしても、受益者代理人の同意書がないままに不動産の

所有権移転の登記が申請されても、法務局は却下することになります。

 

このように受託者の権限を記載することで、信託財産が不当に

処分されることを防ぐことができます。

 

 

3.以上の項目で当事者・目的・終了事由などは

契約書の内容をそのまま記載しても構いませんが、

「2次受益者」及び「残余財産の帰属権利者」などは、

契約書の内容をそのまま信託目録に載せるか慎重に決めるべきです。

 

登記簿は誰でも法務局で閲覧・取得できます。

そこに信託終了時に誰が不動産を取得するのか

などプライバシーが強い情報をそのまま載ってしまうと

トラブルに発展する可能性があります。

 

「2次受益者」や「残余財産の帰属権利者」を

定める信託契約は委託者の遺言を兼ねているので、

その内容を登記簿にそのまま記載されることは避けたい

ところです。

 

そこで、契約当事者以外の氏名・住所などの

プライバシー性が強い事項については、

「平成30年3月26日付熊本地方法務局所属

公証人A作成の信託契約書」記載のとおり」とする

などの記載をすることが多いです。

 

 

 

<用語解説>

委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人

受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等を任された人

受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人

 

受益者代理人:受益者の代わりに権限を行使する人

2次受益者:受益者が死亡した場合などにその地位を承継する人

残余財産の帰属権利者:信託契約が終了した後に、財産を取得する人

 

※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

 

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