家族信託のスタート時の登記
〇民事信託(家族信託)で信託した財産に
不動産がある場合、「受託者固有の財産」と
「信託で託された財産」の区別を明示するために
「信託の登記」を行うことになります。
両者の区別を登記することで、受託者が
破産をしたり、差押をされたとしても
信託された財産には何の影響も受けません。
①信託契約を締結し、委託者(所有者)が
不動産を受託者に信託するケース
信託契約の中に不動産を含んでいる時に
「所有権移転の登記」と同時に行います。
所有権移転の登記は、委託者(所有者)と
受託者が共同して申請しますが、
信託の登記は、受託者が単独で申請します。
信託登記に必要な登録免許税は以下の通りです。
所有権移転分:非課税(0円)
信託登記分:固定資産税評価額の0.4%
(土地については平成31年3月31日までは0.3%)
②信託財産の金銭で、不動産を購入するケース
意外と忘れがち(知られていない?)のですが、
信託財産として管理を任せされている金銭で
購入した不動産は信託財産となります。
信託財産の内容が「金銭から不動産に変わった」
に過ぎませんので、信託財産である旨を
示すために信託の登記が必要になります。
売主から受託者が不動産を購入する場合には、
「所有権移転の登記」と同時に「信託の登記」
を行います。
所有権移転の登記は、売主と受託者が共同で
登記申請を行います。
委託者(受益者)の関与はありません。
「信託の登記(信託財産の処分による信託)」
は、受託者が単独で申請します。
必要な登録免許税は以下の通りです。
所有権移転分:固定資産税評価額の2%
(土地については、1.5%)
信託登記分:固定資産税評価額の0.4%
③信託財産の金銭で、建物を新築するケース
(1)上記②と同様に、信託財産が「金銭から建物に
変わった」だけなので、建物自体も信託財産です。
「所有権の登記(新築の場合なので所有権保存登記)」
と「信託の登記」は同時に申請します。
この場合は当事者は一人しかいませんので、
受託者がどちらの登記も申請します。
必要な登録免許税は以下の通りです。
建物の保存登記分:固定資産税評価額の0.4%
信託登記分:固定資産税評価額の0.4%
(2)では、建物を新築する際に半分は受託者が
信託財産の金銭を活用して支払いをし、
残りの半分は受託者が個人の金銭から支払う場合の
登記はどうなるのでしょうか?
建物の構造や床面積などを示す「表題部」の
登記は信託の表記はできないので、受託者個人の
名前で記載することになります。
一方、所有者の「権利を表す部分」の登記につき、
持分2分の1は所有権保存登記と信託登記
残り2分の1は、普通の所有権保存登記という
登記申請が可能なのか?
建物保存の登記は持分のみの登記ができないので、
上記のような登記ができるのか疑問が残ります。
私自身このケースに遭遇したことがないのですが、
実際に「個人としての持分」と「信託財産の持分」が
混合する新築の場合には、事前に法務局に相談・確認する
ことが必須になってきます。
<用語解説>
委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人
受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等を任された人
受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人
※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。
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