成年後見人と受託者の役割の違い

〇成年後見制度は、認知症や知的障害・精神障害等で、

自分で適切な判断が難しい人を保護・支援するものです。

 

主に家庭裁判所から「成年後見人」に選任された人が

本人の保護・サポートをします。

 

一方、「民事信託(家族信託)」は、本人が将来に認知症等に

なってしまった場合に備えて、所有する財産の名義を取得する

「受託者」を契約又は遺言で選任します。

 

「受託者」は契約で定められた信託の目的に従って、

与えられた権限の範囲内で名義を取得した財産の

管理・運用・処分等を行います。

 

 

〇「成年後見人」も「受託者」も本人のために職務を行う

ことは同じです。

 

「成年後見人」「受託者」の財産と「本人」「委託者」の

財産を混同してはいけませんので、預貯金の通帳は別個にします。

現金は金銭出納帳を作成・記録し、保管も別個にします。

 

成年後見であれば「預かっている」・民事信託(家族信託)であれば

「託されている」財産は、後見人・受託者の為に使ってはいけません。

 

 

「成年後見人」は本人の保護のために職務行いますが、

受託者」は本人の意思・希望をかなえるために職務を行います。

 

「保護」と「希望をかなえる」の違いが、「成年後見人」と「受託者」の

職務に違いがでてきます。

 

 

例えば、銀行や証券会社の営業マンから、利率が良い投資信託の商品を

進められたケースを考えてみましょう。

 

ゼロ金利の時代、本人の財産を増やせるならばと考えても、

元本の保証がなくリスクを伴うことから、成年後見人は

投資信託の契約をすることはできません。

 

成年後見人の役割は「本人の財産の保護」であり、本人の財産を

積極的に増やす役割は与えられていないのです。

 

一方、「民事信託(家族信託)」契約で、目的に沿っており、

受託者の権限の範囲であれば、上記のケースで投資信託の

契約を締結することも可能です。

 

「民事信託(家族信託)」は「委託者本人の希望をかなえる」もの

なので、「財産を積極的に投資して、資産を増やしてほしい」

希望を委託者が持っているのであれば、投資信託契約も締結できます。

 

 

「孫の学費を自分の財産から定期的に出してほしい」ケースでは

委託者本人の希望があれば、「民事信託(家族信託)」の受託者は、

委託者本人の財産から、孫へ定期的に学費を出せます。

 

「民事信託(家族信託)」の受託者は本人(委託者)の希望を

かなえる役割をします。本人(委託者)の財産が減少することになっても、

本人の希望に沿うようにすることが職務なのです。

 

成年後見人の場合は、本人がどんなに望んでいても、

本人の財産を積極的に減らす行為をすることはできません。

 

 

<用語解説>

委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人

受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等をお願いされた人

受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人

 

※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

 

 

司法書士・行政書士西本清隆事務所

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