危ない「民事信託(家族信託)契約書」

〇「民事信託(家族信託)」の認知度も徐々にではありますが、

拡がっています。

 

先月「民事信託(家族信託)セミナー」を開催した際にも

アパートのオーナー・銀行員・NPO団体の方等、様々な方に

参加して頂きました。

 

 

〇民事信託(家族信託)の認知度が増えていくことは良いことですが、

それに比例して「民事信託信託契約書の雛形」をなぞっただけの

危険な民事信託契約書が世に出回ってきます。

 

インターネットや書籍で雛形を見つけ、名前や数字を変えるだけで

契約書を作成してしまう、全く民事信託(家族信託)の理解をしていない

「自称専門家」が現に存在しています。

 

雛形をなぞっても、それらしい契約書ができてしまいますし、

法的に間違いないので、公証人や法務局の登記手続きもパスする

ことも実際にあります。

 

しかし、契約当事者の「想い」とは違う内容の契約書が完成しても

意味がありません。

 

 

 

〇以下の点が、契約書に盛り込まれていたら、「雛形」を真似ただけの

契約書の可能性が高く、危ない契約書かもしれません。

 

 

1.信託の存続期間の定め

 

「契約時から5年で終了する」といった条項は必要ありません。

信託期間の定めは信託銀行等の「商事信託」の契約書に記載してあります。

これは、委託者が受託者(信託銀行等)へ手数料を支払うので、いつまでという

期限を区切る必要があります。

 

一方、「民事信託(家族信託)」は家族・親族間で行うものであり、

特段手数料が発生するわけではありませんので、記載すべきではありません。

 

 

2.受託者を必要以上に規制する条項

 

成年後見と同様に考えて、受託者の暴走を防ぐ趣旨だと思われますが

民事信託(家族信託)は、家族間の信頼関係で形成するものです。

 

民事信託(家族信託)の場面には「暴走」「横領」といった概念は存在しません。

受託者を信頼できないのであれば、そもそも「民事信託(家族信託)」を形成する

必要はありません。

 

 

3.破産した場合の定め・管轄裁判所の定め

 

破産等のネガティブな言葉は「民事信託(家族信託)」契約書には記載しない

方が良いです。

 

通常の契約書には当然の如く記載してありますが、第三者との契約とは違い

民事信託(家族信託)の契約は家族間での契約です。

法的に素人の当事者間で「破産」といった言葉は、専門家が思う以上に

重たく感じます。

 

また、破産した場合には受託者の地位を失うことは、信託法に記載してあり、

条文に規定されていることを改めて記載する必要はありません。

 

 

管轄裁判所についても、「そもそも家族で裁判するんですか?」

委託者と受託者は対立関係にありませんので、争うことを前提とする

条文は不要です。

 

 

<用語解説>

委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人

受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等をお願いされた人

受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人

 

※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

 

 

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