「民事信託(家族信託)」と登記
〇民事信託(家族信託)の契約を行い、信託がスタートすれば、
委託者の所有する現金・株式は受託者に託されます。
委託者が不動産を所有していれば、当然に受託者が管理しますが、
受託者自身が所有する「固有財産」と区別がつくように、
「信託の登記」が必要になります。
〇民事信託(家族信託)は、「所有権」を「名義」と「権利(受益権)」の
2つに分け、「名義」を受託者に、「権利(受益権)」を委託者が持つこと
になります。
受託者は「名義」を取得するだけですので、不動産の登記簿の名義を
受託者名義へ変更する手続き(所有権移転の登記)を行うと同時に、
あくまでも「委託者から託されている」ことが分かるよう、
「信託」の登記を同時に申請します。
「所有権移転」の登記手続きは、委託者と受託者が共同して行いますが、
「信託」の登記手続きは、受託者が単独で行います。
〇「信託」の登記申請では、「信託目録」に記載される内容が必要です。
「信託目録」には、当事者(委託者・受託者・受益者)・信託の目的・
財産管理方法・終了事由等が記載されます。
家族信託の具体的内容が不動産の登記簿に記載され、受託者は定められた範囲で
不動産の管理等を行うことになります。
もし、不動産の管理方法が「管理・運用」のみであれば、その後不動産を売却して
資金を用意する必要が出てきても、受託者は不動産の売却(処分)はできません。
〇不動産の登記手続きには、法務局へ登録免許税を納付しますが、
「信託」の登記申請には、不動産の固定資産評価額の0.4%が必要ですが、
「所有権移転」の登記申請には登録免許税はかかりません。
あくまで「民事信託(家族信託)」を設定することで受託者に移転するのは
「名義」にすぎず、実質的には所有権移転ではないからです。
〇委託者と受託者が同一である場合の「自己信託」の場合は、
どのような登記手続きでしょう。
1人で構成する自己信託では権利の移転は伴いませんが、
委託者の所有する不動産が「信託財産」に変わりますので、
「変更の登記」を行い、不動産が信託財産となった旨を公示します。
1人で委託者兼受託者の役割をするので、当然登記申請も単独で
行うことになります。
<用語解説>
委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人
受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等をお願いされた人
受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人
※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。
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