「民事信託(家族信託)」契約と公正証書

「民事信託(家族信託)」は、家族・親族間で、財産管理や

財産承継の仕組みを作るもので、本人(委託者)と親族(受託者)

による契約を締結することで、信託が始まります。

 

契約書を作成するにあたり、公証人が作成する「公正証書」と

当事者間で作成する「私文書」のどちらが良いのでしょうか?

 

普通に考えれば、公証人という公的機関が関与して作成する

公正証書がベターな感じがします。

 

一般的に公正証書で作成するメリットといえば、

1.紛失・偽造の心配がない

2.簡単であるが、法律的なチェックをしてもらえる

3.差押え等の強制執行がスムーズにできる

ことです。

 

これを「民事信託(家族信託)」の契約に当てはめてみると

上記1は信託がスタートすると、委託者(受益者)の死亡により

終了するものでなければ、この先数十年続きます。

当事者も変わってきますので、契約書が保全される効果は大きいです。

 

 

上記2については、一般的な家族信託の条文等に反していないかの

チェックはしてもらえます。

ただ、信託の設計や財産管理・承継の方法は、個別事案で異なりますので、

必ずしも、当事者の想いとおりの信託契約ができるのかは別問題です。

 

 

上記3の強制執行については、「民事信託(家族信託)」については、

家族・親族間で財産管理・承継を行うものですので、メリットに

なりません。

 

 

〇「民事信託(家族信託)」では、不動産を信託すれば、その旨の登記が

必要ですが、「私文書」の形式でも可能です。

また、銀行で「信託口」の口座・通帳を作成する際にも、公正証書の契約書

であることは、特段求められていません。

 

当事者で作成した、私文書の契約書でも「民事信託(家族信託)」を設定したことは

分かりますので、私文書で作成したうえで、公証人の認証を受ける形でも構わないでしょう。

 

 

〇契約書には当事者の署名・捺印も必要になりますが、契約当事者である

「委託者」「受託者」だけに限らず、後に関与してくる「二次受託者」

「信託監督人」「受益者代理人」や「相続人」がいれば、

『信託契約があることは知らなかった』など、後々に言われないように

署名・捺印をしてもらうことは有効です。

 

公正証書の契約書でも、公証役場で作成する段階では「委託者と受託者」のみが

署名・捺印しますが、作成完了後の契約書の謄本に、相続人・関係者の

署名・捺印をしてもらうことが、後のトラブルを防ぐ効果があります。

 

 

 

<用語解説>

委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人

受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等をお願いされた人

受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人

 

※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

 

 

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