認知症が「民事信託(家族信託)」契約に及ぼす影響

「民事信託(家族信託)」の活用ケースの約6割は認知症に備えて

行われますが、信託契約を締結した後に、当事者が認知症になった場合、

信託契約に何か影響があるのでしょうか?

 

 

「民事信託(家族信託)」には主に3人の当事者がいます。

 

委託者:信託する財産の「もともとの所有者」で、信託をお願いする人

受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等をお願いされた人

受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人ですが、

当初は委託者が受益者になることが多いです。

 

 

〇「委託者」が認知症になった場合は、特に「民事信託(家族信託)」に

影響を及ぼすことはありません。

 

信託契約を締結して、「受益者」に財産を贈与した「委託者」は、

信託契約が無効にならない限り、その後の信託とは無関係になるからです。

 

 

「受託者」が認知症になった場合は、「受託者」として、「委託者」から

託された財産の管理・運用等を行うことはできません。

 

新たに「受託者」を選んで、「信託契約を変更」又は「新たに信託契約を締結する」

必要があります。

 

もし、新たな受託者が1年以上選ばれない場合には、信託自体が終了することに

なりますので、注意が必要です。

 

 

〇「受益者」が認知症になった場合は、信託には特に影響を及ぼしません。

 

「受益者」はあくまで、「信託された財産」からの利益を享受する地位を

取得したに過ぎません。

受益者自身が、財産の管理・保全等をすることはしないからです。

 

 

受益者が認知症になり、成年後見人が選任されても、後見人の権限は

信託財産には及びませんので、信託契約に基づく、財産の管理・運用等は

引き続き行うことができます。

 

後見人にとっても、事前に信託された財産については、管理しなくても良いので、

職務が軽減されることになります。

 

 

ただ、「委託者」(=「受益者」)=「受託者」という「自己信託」の場合には

受託者が別人ではありませんので、「受託者」が認知症になった場合と同様、

新たな受託者を選任する必要があります。

 

ところが、信託自体を1人の人間で構成しているので、信託契約の変更を行うことは

現実にはできずに、信託自体が終了することになるでしょう。

 

 

<用語解説>

「自己信託」:1人の人間が「委託者」と「受託者」を兼務すること

自分が自分へ財産管理等を信託することになる。平成19年の信託法の改正で

認められた信託の形態。

 

※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

 

 

司法書士・行政書士西本清隆事務所

住所 〒862-0971
熊本県熊本市中央区大江6丁目4-10
TEL 096-288-0003
FAX 096-327-9215
営業時間 8:00~20:00
アクセス
・県道58号線 白山交差点を北に350m
・熊本市電 味噌天神前駅から徒歩4分