「民事信託(家族信託)」と税金

「民事信託(家族信託)」を行うことで、税金は何か軽減・減免される

のでしょうか?

 

税務の世界においては信託には「パス・スルー機能」が適用されます。

簡単にいうと「信託はないものとする」ということです。

 

〇税制度の鉄則として「新たに利益を得た者」に対して課税されます。

例えば、AさんがBさんに対して300万円贈与したとすれば、

ここで利益を得ているのは・・当然Bさんなので、Bさんに対して

贈与税が課税されることになります。

 

これを「信託」にあてはめると、信託によって利益を得るのは、

「受益権」を取得する「受益者」になります。

 

形式上、所有権を取得するかのように見える「受託者」ですが、

「信託」によって名義(及び義務部分)を取得するに過ぎない

「受託者」は利益を取得するものではないので、「受託者」に課税

されることはありません。

 

 

一方、「委託者」が信託によって、「受益者」となる「自益信託

の場合はどうでしょう?

「自分が自分自身へ贈与する」ことになり、新たに利益を得るものでは

ありません(あくまで、左のポケットから右のポケットに移しただけ)ので、

「自益信託」の場合には課税はされません。

 

 

 

〇他に「所有権を取得した者」に課税する税金として「不動産取得税」があります。

 

「信託」では、「受託者」に不動産の名義が登記簿上移転することになりますが、

「受託者」は「所有権を取得するものではない」ので、不動産取得税が課税される

ことはありません。

 

信託が終了し、「受益権」の状態から、もとの「所有権」の状態に戻った時に

所有権を取得する者に対して不動産取得税が課税されます。

 

 

家族間で不動産を移転させていくのであれば、最初に不動産を「信託財産」とします。

その後「受益権」として家族間で移動させていけば、不動産取得税も課税されませんし、

登記手続きでも高い登録免許税を払わずに、受益者の移転として、「1000円」のみの

負担で済ませることができます。

 

最後に、不動産を売却する時に「所有権」に戻し、買主に不動産取得税を

負担してもらう方法も可能です。

 

 

 

相続税との関係では、あくまで「受益権」の移転ですので、

通常の「相続」による移転とは異なりますが、税の世界では

「受益権」の移転も「みなし相続」として相続税が課税されます。

(もちろん、相続税の対象となる価値があればの話ですが)

 

相続税が適用されますので、「配偶者控除」「相続時精算課税制度」も

信託による「受益権の移動」に適用されます。

 

 

 

<用語解説>

委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人

受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等をお願いされた人

受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人

 

※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

 

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