「民事信託(家族信託)」で共有状態を解消

相続が発生して、自宅が相続人の共有状態になることは

珍しくありません。

何も相続人間に問題なければ良いのですが、相続人間に

何かしらの問題が発生すると、とても複雑なことになります。

 

〇共有物は、所有者全員の合意のもとでしか、売却することはできません。

もし、共有者の1人でも反対する者・認知症等で判断できない者が

いれば、もはや売却手続きを進めることはできません。

 

認知症になっても、成年後見人を選任してもらえば、

売却できるのでは?と思うかもしれませんが、

自宅等を売却するには、事前に家庭裁判所の許可が必要となり、

必ずしも許可がもらえるとは限りません。

 

もし、売却許可がもらえなければ、自宅を売却することは

事実上できなくなります。

 

 

〇このような共有状態も「民事信託(家族信託)」を活用することで

解消することができます。

 

父親が亡くなり、母親・長男・次男が法定相続をしたケースを

考えてみましょう。

このままでは、高齢の母親が認知症になる可能性や相続人間の

トラブルが発生する可能性もあり、不安定な状態です。

 

 

〇「信託」を活用して、共有者3人が「委託者」となり、自宅を

「信託財産」とします。信託をお願いされる「受託者」には

新しく設立する「一般社団法人」にします。

 

信託することで、相続人3人が所有している自宅に対する権利は

「所有権」から「受益権」に変わります。

言い方を変えると、自宅に対する権利の行使の仕方が「受益権」

という権利(自宅を使用・居住できる権利)に変わります。

 

「信託」をする結果、3人の相続人は「受益権」を持ち、

受託者が管理・処分権限を持つことになりますので、

売買契約を締結したる、書類に捺印するのは、「受託者」になります。

 

その結果、仮に相続人の1人が認知症になっても関係ありませんし、

相続人が死亡しても「受益権」が子ども等に移るだけですので、

何の問題もなく「受託者」が自宅の管理・処分をすることができます。

 

 

 

〇注意する点としては以下の2点があります。

 

1.3人の相続人が所有権として保有していた持分の割合と

「受益権」の割合を一致させておくことが大事です。

割合が一致していないと、贈与税が課税される可能性があります。

 

 

2.受託者は「委託者とは別人」にしておく必要があります。

仮に上記のケースで長男を受託者としてしまうと、母親・次男については

長男との「信託契約」になりますが、長男自身は「委託者=受託者」となり、

「自己信託」となってしまい、複雑な関係が生じてしまいます。

 

上記では「持分に財産価値を持たせない、一般社団法人」を受託者にしましたが、

他に相続人、親族がいれば、その人を受託者にしても大丈夫です。

ただ、受託者は自然人でなく法人の方が、長年に渡って安定した「信託」による

財産管理ができることは間違いありません。

 

 

 

 

司法書士・行政書士西本清隆事務所

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