知られざる遺言書とは
〇最近の「終活ブーム」の中で行われるセミナーでは
遺言書について説明されますが、相続セミナーでは
触れられることがない「知られざる」遺言書があります。
1.それは「秘密証書遺言」というものです。
「自筆で作成する遺言書(自筆証書遺言)」と
「公証役場で作成する遺言書(公正証書遺言)」については、
どの相続セミナーや書籍にも触れられており、
認知度も高いのですが、この「秘密証書遺言」は
ほとんど知られていません。
誤解を恐れずに言えば、「自筆証書遺言と公正証書遺言をミックスした」
遺言書になります。
実務上作成されるケースは稀であり、公証人や法律専門家ですら
正確な作成方法を知らないのが実情です。
この「秘密証書遺言」が作成されることは、全国で年間100件前後と
言われています。
2.秘密証書遺言は、遺言書の内容を秘密にしたまま
作成・保管することが可能です。
ただ、遺言内容について公証人がチェックするものではないので、
法律的に不備があったりする可能性があります。
遺言者が死亡して、いざ遺言を執行しようとした場合には
家庭裁判所に検認(開封)の手続きをする必要があります。
上記の特長は「自筆証書遺言」と同じです。
一方、遺言書を作成したこと自体は、公証人及び証人2名に
知られてしまいます。
公証人及び証人の関与が必要になることは「公正証書遺言」と
共通しています。
3.では、「秘密証書遺言」はどのような手順で作成される
のでしょうか?
①遺言書の作成
遺言書は必ずしも「自筆で記載」する必要はありません。
他の人に代筆してもらってものでも大丈夫ですし、
パソコンで作成しプリントアウトしたものでも大丈夫です。
また、遺言書に捺印する必要がありますが、実印である必要は
なく、認め印でも構いません。
文案を作成する際に注意することとして、
遺言書には自書で署名する必要がありますので、
署名すらできない場合には作成が難しいです。
②遺言書の封入・封印
作成した遺言書自体を封筒に入れます。
封筒に入れた後に封印する必要がありますが、封印で使用する
印鑑は遺言書に捺印した印鑑であることが必要です。
もし、異なる印鑑で封印してしまうと、遺言書自体が
無効になってしまいますので、注意が必要です。
ここまでは、遺言書を作成した本人が行います。
③封書を公証人に提出・署名捺印
「秘密証書遺言」を封入した封書を公証人及び証人2名の
面前に提出して、遺言書である旨を述べます。
公証人・遺言書を作成した本人及び証人2名は
遺言書が入っている封筒に署名捺印します。
封筒には公証人・本人・証人の署名捺印の他に
秘密証書遺言である旨や年月日等を記入するので、
封筒は大型のものを使用することが大切です。
4.「秘密証書遺言」は「遺言を作成したこと」自体は
公証人及び2名の証人には知られてしまいますが、
「遺言の内容」については、誰にも知られずに作成できます。
内容は誰にも知られたくないけど、遺言自体を
作成したことは、他の人に知らせておきたい場合には
作成する価値はあるかもしれません。
司法書士・行政書士西本清隆事務所
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