信託できる財産・できない財産

「民事信託(家族信託)」では、契約書等で定めた「信託財産」が

受託者へ「名義」を取得し、その「信託財産」を管理・処分します。

主に現金・不動産・自社株が代表的なものですが、「信託財産」として

定めても効力を生じないものもあります。

 

 

〇委託者の銀行の預金口座

委託者の銀行口座を、信託契約書に記載してあるケースもあります。

たしかに、銀行口座は「銀行への預金債権」なので、信託できそうな感じもしますが、

預金債権は「譲渡禁止債権」なので、銀行に「信託」の事実を主張・対抗する

ことができません。

 

受益者(委託者)が亡くなった場合には、「相続手続き」でなければ、

銀行口座を解約することはできません。相続人全員の戸籍・印鑑証明書等が

必要になってしまいます。

 

この場合は委託者の銀行口座からお金を引き出して、「現金  〇〇円」と

する他ありません。

 

〇生命保険金の死亡保険金

生命保険金の死亡保険金を受領する権利を有するのは、生命保険で定めた

受取人であり、委託者の権利ではありませんので、信託財産にはできません。

 

では、生命保険の「解約返戻金」「満期保険金」はどうでしょう?

これらの権利は委託者(契約者)の債権であり、預金債権と異なり、

「譲渡禁止債権」ではありませんので、「信託財産」になり得ます。

 

ただ、生命保険会社が「解約返戻金」「満期保険金」の請求に応じてくれる

かは別問題です。

 

〇将来債権

現在、裁判で争っている「損害賠償請求権」で、信託設定で、取得できるか

不確定な財産は「信託財産」にできます。

 

似たものですが、「将来、相続する予定の親の財産」は、信託できません。

これは、「債権」ではなくあくまでも「期待権」に過ぎないので、

「信託財産」とすることはできません。

 

〇債務・負債

債務・負債は信託できません。あくまで積極財産(プラス財産)のみしか

「信託」することはできません。

 

債権者(金融機関)の同意を得て「債務引受」をすることになります。

 

 

〇信託設定後に取得した財産

信託設定後に委託者が取得した財産は、当然には「信託財産」にはなりません。

それらの財産も「信託財産」にするには、「追加信託」をすることが必要です。

 

遺留分対策として、「すべての財産を信託財産」にするには、「遺言追加信託」

おススメです。

「私が死亡した時に所有している、信託財産以外の全ての財産を、

この信託に信託財産として入れる」旨の遺言信託をすることで、

委託者が死亡時に保有する財産の全て信託財産とすることも可能です。

 

 

<用語解説>

委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人

受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等をお願いされた人

受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人

 

※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

 

 

司法書士・行政書士西本清隆事務所

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