相続する財産は少ないなら遺言書はいらない?
「自分が亡くなっても、遺産はほとんどないから、遺言書とか
相続対策はいらない」と思われる方は、結構おられます。
現金・預貯金・株式・不動産・・と相続させる財産をたくさんお持ちで
あれば、誰にどの遺産を相続させようか?と考えるのは普通でしょう。
一方、「預貯金もほとんどなく、わずかな年金のみで細々と生活している」
という方は、亡くなった後の相続について、あまり考えないかもしれません。
しかし、相続が発生し、残された相続人間で遺産をめぐって争うかどうかは
遺産の額が多い、少ないとは関係ありません。
家庭裁判所で行われる遺産分割調停の事件で、相続財産が5000万円以下のケース
での争いが全体の約75%を占めているというデータがあります。
このデータは意外と思いませんか?
億万長者の相続こそ相続人間で争いになるイメージがありますよね!?
たとえ財産が100万円でも、「貰えるものは貰う」というの本音です。
財産が1000万円でも10億円でも相続する子どもにとっては変わりません。
むしろ遺産額が少ないからこそ、貰える遺産の額に違いがあることで、
リアル感があって争いになるケースが多いのではないでしょうか?
親が亡くなり子ども2人が相続人の場合で、「兄が6億円・弟が4億円相続するケース」と
「兄が600万円・弟が400万円相続するケース」を比較してみましょう。
弟の立場で考えると前者のケースでは、4億円という大金が貰えるので、生活に困ることも
ないですが、後者のケースでは、200万円という数字に生活感がでてきます。
子どもの学費や車の買い替えの費用に充てることができる金額ですよね。
また、「平等に分けよう」と相続人同士考えていても、「何が平等なのか」は
各相続人間の主観によって異なり、相続人全員で行う遺産分割協議では
まとまらないケースが多いのです。
現金や預貯金のように相続人の数で割れるものであれば、形式的には均等できます。
しかし、不動産のように物理的に分割できないものもあります。
不動産を相続人間で共有することも可能ですが、その後に処分する際には
相続人全員の同意が必要になってきますので、相続人間で争いがある場合には、
事実上その不動産を活用・処分できずに、放置せざるを得ません。
また、亡くなった親の面倒をずっと看てきたきた子どもは、
全く親の面倒もしなかった兄弟より多くもらって当然!という気持ちも
でてくるのは自然なことです。
現金のように形式的には均等で分割できても、「親の面倒を看た自分が
兄弟と同じなんて納得できない」という気持ちもでてきます。
〇遺言書があることのメリット
遺言書を作成することで、誰にどの財産を相続させるかを示すことができます。
相続人は、遺言書を基に不動産の名義変更や預貯金の口座の解約手続きが可能です。
遺言書がない場合には、遺産分割協議書を相続人全員で作成し、実印で押印をしなければなりません。
そこに争いがあれば、遺産分割協議書も作成できずに、相続手続きも進めることができません。
このように、遺言書があれば、相続人全員での遺産分割協議を省略できます。
内縁の妻などの法定相続人以外の人にも、遺産を残すことができます。
司法書士・行政書士西本清隆事務所
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