自筆証書遺言保管制度と公正証書遺言の比較
1.自筆証書遺言保管制度の新設
自筆証書遺言保管制度を活用することで、
自筆証書遺言(直筆の遺言)を法務局に
保管することができます。
以前は、自筆証書遺言は自分で作成し、
自分で保管する必要がありました。
しかし、紛失や改ざんのリスクがあるため、
この新しい保管制度が導入されました。
法務局で遺言を保管することで、
安全に保管されるだけでなく、
検認手続きも不要となるため、
遺言執行がスムーズに進むというメリットがあります。
2.自筆証書遺言保管制度のメリット
①安全な保管
法務局で保管されるため、紛失や盗難、
改ざんのリスクがありません。
②検認手続きが不要
従来、自筆証書遺言は家庭裁判所での
検認が必要でしたが、保管制度を利用すると
検認の手続きが不要になります。
③安心感
手続きをする際に形式的な不備がないかの
チェックを受けるため、遺言の不備や無効
となるリスクが減少します。
④費用の節約: 公正証書遺言と比べて、
費用は低額になります。
3.自筆証書遺言保管制度のデメリット
①手続きの手間:
遺言作成した本人が法務局に出向いて
手続きを行う必要があります。
高齢者や身体が不自由な方には負担と
なる場合があります。
②保管料: 保管制度を利用するには
一定の手数料(3900円)必要です。
③変更手続きの必要
遺言内容を変更する場合、
新たに作成し直し、改めて
法務局に提出する手間が発生します。
4.自筆証書遺言保管の手続き
①予約: 事前に法務局のウェブサイトから
予約を行います。予約は電話やインターネットで可能です。
②必要書類の準備: 遺言書、本人確認書類(運転免許証や
パスポートなど)、保管申請書を準備します。
③法務局での手続き: 予約した日時に法務局に出向き、
手続きを行います。法務局職員が遺言書の形式を確認し、
保管します。
5.公正証書遺言との比較
⑴公正証書遺言のメリット
①法的安全性: 公証人が作成するため、
形式不備や無効となるリスクがほとんどありません。
②専門的なアドバイス: 公証人や法律専門家からの
専門的なアドバイスを受けることができ、
遺言の内容が法的にしっかりとしたものになります。
④第三者の証明: 遺言内容に関して2名の証人がいるため、
遺言作成の意思や判断能力にも争いが生じにくくなります。
⑵公正証書遺言のデメリット
①費用の負担: 公証人への手数料が発生し、自筆証書遺言よりも
費用のコストは高くなります。
②手続きの複雑さ: 公証人との面談や遺言書の内容を
確定する際のやり取りが必要なので、作成にかかる
時間がかかります。
③プライバシーの問題: 遺言内容が公証人や証人に
知られるため、プライバシーが気になる方には不向きです。
6.どちらの遺言方式を選ぶべきか?
自筆証書遺言保管制度と公正証書遺言のどちらを選ぶかは、
個々の状況やニーズによって異なりますので、
一概に優劣を決めることはできません。
以下のポイントを考慮して選択することをお勧めします。
①費用と手間のバランス: 費用を抑えたいが、一定の安全性を
確保したい場合は、自筆証書遺言保管制度が適しています。
逆に、費用をかけても法的に確実さを求める場合は、
公正証書遺言が良いでしょう。
②プライバシーの保護: 遺言内容を他人に知られたくない場合は、
自筆証書遺言保管制度が適しています。
③遺言の内容: 複雑な内容の遺言書を作成する場合は、
公証人のアドバイスが受けられる公正証書遺言が適しています。
7.まとめ
自筆証書遺言保管制度は、遺言の安全な保管と
スムーズな遺言執行を可能にする新しい制度です。
紛失や改ざんのリスクを減らし、検認手続きを不要と
することで、相続人にとっても負担が少なくなります。
遺言の内容や個々の状況に応じて、
最適な遺言方式を選択することが重要です。
遺言作成は、将来のトラブルを避けるための重要な手段です。
適切な制度を利用して、自分の意思を確実に伝えましょう。
当事務所でも遺言作成について相談を受けておりますので、
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