家族信託の税務手続き
〇家族信託契約の締結を行っただけでは、「特定の財産を信託した」
ことはが、家族以外には分かりません。
そこで、税務上の届出を「信託開始時及び信託の期間内」に行う必要があります。
1.<信託開始時>
(1)信託契約を締結した日が属する月の翌月末月までに
「信託に関する受益者別調書」「信託に関する受益者別調書合計表」
を税務署へ提出する必要があります。
3月11日に委託者と受託者で信託契約を締結したならば、
4月30日までに税務署に提出することになります。
「受益者別調書」は、信託財産から利益を享受する受益者に
対して贈与税・相続税などを課税するためのものです。
「受益者別調書」には「委託者・受託者・受益者の表示」
「信託財産の種類・所在場所・数量・価額」・「信託期間」
などを記載します。
(2)ただし以下の場合には「受益者別調書」等の提出は不要です。
①受益者ごとの信託財産の相続税評価額が50万円以下の場合
②委託者=受益者(自益信託)の場合
①は50万円以下の小さな財産の移動に過ぎないので、贈与税などの
課税対象になりませんし、②は信託する前後で利益を享受する人が
変わらず、課税関係にも変化がないからです。
2.<信託期間中>
(1)受託者は「信託の計算書」「信託の計算書合計表」を
毎年1月31日までに税務署へ提出します。
これは、毎年1月1日から12月31日までに信託財産からの
収益で「いくら儲かったのか」を税務署が把握し、所得税を
課税するためのものです。
1月31日までに受託者が、1年間の収益と費用の計算を行い、
それを受けて、受益者が2月~3月にかけて確定申告を行います。
「信託計算書」には「委託者・受託者・受益者の表示」
「信託期間」「受益者変更の有無」「交付した利益」
「収益及び費用の明細」「資産及び負債の明細」などを記載します。
(2)例外として収益の額が3万円以下の場合には、信託計算書の
提出は不要です。
収益用不動産(貸しアパートなど)を信託財産としているケースでは
収益が3万円以下というのは通常ないので、計算書の提出は必要です。
一方、自社株を信託財産としているケースで、株式の配当金がない時には
計算書の提出は不要となります。
「居住用の自宅」や「金銭」を信託財産とするケースでも、収益を
生じることはないので、計算書の提出は不要となります。
<用語解説>
委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人
受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等を任された人
受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人
※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。
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