銀行の信託口口座は必須!?

〇民事信託(家族信託)の相談を週に1,2件受けていますが、

最近は相談される方もよく勉強されており、「金銭の管理口座は

どこの銀行で作れますか?」とよく聞かれます。

 

1.「家族信託」そのものが、新たな制度・仕組みなので、ほとんどの

金融機関も対応していないのが現状で、受託者が金銭管理するための

「信託口口座」に対応している金融機関は、現時点では数える程です

(三井住友信託銀行と数行の地方銀行のみ)。

 

私も地銀で「信託口口座」の名称がついた口座開設ができたことも

ありますが、残念ながら「信託口口座もどき」の口座に過ぎません。

 

通常使用する「屋号付の口座」と同じ取扱いのもので、

受託者個人の口座となんら変わりないものです。

受託者が亡くなればその口座は凍結されてしまいます。

 

 

2.では、信託口口座が現状で開設できないのであれば、

「家族信託」はできないのでしょうか?

 

実際そのようなことを言う専門家もいますが、

結論からいえば、そんなことはありません。

 

受託者(子ども)は委託者(親)の財産を「分別して管理」

する必要がありますので、不動産であれば「信託登記」で、

金銭であれば受託者の財布・銀行口座とは別個に管理を

行うことになります。

 

ただ、信託法上どこにも「信託口口座」を作成して金銭を

管理しなければならないと記載されているわけではありません。

 

受託者の義務はあくまで、自分の財産とは別個に「分別管理」

を行うことです。

 

 

3.ならば、信託契約書を作成後、信託契約書を持って

いくつもの金融機関に行き「信託口口座」の説明や開設

のお願いを、行うことはナンセンスです。

 

①受託者個人名義で銀行口座(信託専用口座)を開設

②信託契約書にその信託専用口座の情報を記載

③契約締結後に委託者の金銭を、信託専用口座に入金し保管

 

現状では、以上の方法で行うしかないと思います。

 

もちろん、受託者が信託期間中に死亡すれば、

信託専用口座はロックされることになりますが、

予備受託者(受託者に万一の際、受託者の地位を

承継する人)に予めキャッシュカードの暗証番号を

教えるなどして、受託者に何かあった際には

予備受託者が口座凍結される前に、預金を引き出せる

ようにしておけばOKです。

 

その後、新たな受託者が別個に信託専用口座を開設して

金銭を管理すれば事足ります。

 

金融機関が普通に「信託口口座」を開設できる状況になれば、

その時に改めて信託口口座で管理すれば良いでしょう。

 

 

「現状では制度が整っていないからできない・やらない」のではなく、

現時点での最善の対策をとって、依頼者の願いをかなえることが

「法律実務家の役割」ではないでしょうか。

 

 

<用語解説>

委託者:信託する財産のもともとの所有者で、信託をお願いする人

受託者:委託者からの信頼に基づいて、財産の管理・処分等をお願いされた人

受益者:信託された財産から生じる利益を受ける人

 

※「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

 

 

 

司法書士・行政書士西本清隆事務所

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