成年後見の財産管理と身上監護

成年後見が行う職務内容としては、以下のものがあります。

 

1.成年後見の「開始時」には、まずご本人の「財産状況の調査」から始めることになります。

 

ご本人が、どのような種類の財産を、ごれだけ保有しているのかを把握しないと

財産管理ができないだけでなく、適切なプランを立てることができません。

 

例えば、ご本人が1人で生活するのは難しく、近くに家族等日常生活をお世話する

人もいないのであれば、老人養護施設の入居も検討しないといけません。

しかし、年金収入しかなく、預貯金もあまりない状況で、自宅の不動産を売却すれば、

施設の入居費用が捻出できるならば、それを検討する必要があると分かります。

 

また、ご本人の預貯金があれば、相続の場合と同様に、銀行窓口で成年後見による変更手続き

を行うことになります。

 

銀行によって、「ご本人名義のままの通帳」と「ご本人〇〇成年後見人△△」という

名義の通帳の2種類があります。

ご本人がキャッシュカードを持っている場合に、成年後見の変更手続き後も

キャッシュカードがそのまま利用できる銀行もありますので、

変更手続きをする際に確認されて下さい。

 

 

 

2.「日常的」に成年後見人の職務は「身上監護」と「財産管理」です。

 

 

「身上監護」って聞きなれない言葉だと思いますが、

代表的なものは、以下の通りです。

  1. 入院等における病院での手続き
  2. 健康診断の受診手続き
  3. 賃貸借契約等を行い、本人の住居を確保
  4. 施設の入退所手続き、契約
  5. 要介護認定、更新の手続き・介護事業者との介護サービス契約を行う
  6. 定期的な面会等によりご本人の状況に変化がないかを見守ること

決して、お風呂にご本人が入るのを手伝ったり、家の草むしり、掃除を行う等の

「事実行為」をサポートすることでは、ありません。

 

成年後見人にご家族が就任された場合には、当然それらのお手伝いは

「扶養義務」の一環としてされた方が良いでしょう。

 

 

 

一方、「財産管理」の内容としては、不動産の売買・賃貸借、預貯金の出し入れ、

家賃の支払い・受領、公共料金・保険料の支払い、遺産分割協議などです。

 

その中でも「遺産分割協議」や「不動産を売却する」といった、ご本人の財産が大きく変動する

可能性があるものは、注意が必要です。

 

1.遺産分割協議を本人の代わりに行うケース

ご本人の親族が死亡し、ご本人が相続人として他の相続人と遺産分割協議を行う場合には、

成年後見人がご本人の代わりに遺産分割協議に参加することになります。

 

その際、原則成年後見人は、本人の法定相続分(当然取得できる相続分)

を確保することが必要になります。

 

相続放棄は、債務超過(借金等マイナスの財産が現金等プラスの財産より多い)

が明らかな場合を除いては認められません。

 

 

また、他の相続人がご本人の成年後見人となっている場合には、

ご本人と他の相続人である成年後見人の利害が対立するので、

そのような場面では、成年後見人は本人の代理として遺産分割協議をすることが

できません。(公正な遺産分割協議ができないからです)。

 

そのようなケースでは、本人の代理人として「特別代理人」を家庭裁判所に

選任してもらうことになります。

 

 

2.本人名義に不動産を売却、処分するケース

 

本人が自宅を処分して有料老人ホームに入居を希望し、他の親族も同意しているでも、

成年後見人は、本人の代わりに売買契約を当然に行ってよいわけではありません。

生活環境の変化は、本人の心身影響を及ぼすものだからです。

 

そこで、「居住用の不動産」を処分する時には、事前に必ず家庭裁判所の許可が必要

になります。家庭裁判所の許可の得ないで、売買契約をした場合は「無効」になりますので、

注意が必要です。

なお、「居住用の不動産」とは、現在住んでいる不動産に限らず、過去に住んでいた不動産も

該当しますので注意が必要です。

 

居住用でない不動産であっても、本人の重要な財産の処分に該当しますので、

処分が適正か(処分する理由・売却代金等)どうか、家庭裁判所に相談してください。

 

 

 

 

また、財産管理の目的はご本人の財産を安全に保有することですので、

元本保証がない投資信託などはできません。

ご本人の財産を「静的に」管理することしかできないのです。

 

 

 

本人の預貯金から出費(証明書の取得費用)をした場合には、

領収書等の証拠の保管は必須です。

 

成年後見人は、家庭裁判所へ定期的な報告義務がありますが、

家庭裁判所への報告の正確性を担保するものになります。

それと同時に「あらぬ疑い」がかからないようにする意味でも大切です。

 

 

 

「身上監護」「財産管理」ともに、表裏一体の関係にあります。

ご本人の意思を尊重したうえで、ご本人の心身状態、生活状況に配慮し、

「ご本人にとって最も良い生活を送れるように、ご本人の財産を活かす」ことが大切です。

 

 

 

 

司法書士・行政書士西本清隆事務所

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